05 Aug. 2016

ワーグナーをめぐる物語

 

                   k.mitiko

 

リヒャルト・ワーグナーと言えば結婚式で演奏されるオペラ

「ローエングリン」の結婚行進曲(婚礼の合唱)や「タンホイザー」の

大行進曲、映画「地獄の黙示録」でのワルキューレの騎行など日本人

にも馴染みのある作曲家ですが、オペラの世界では「楽劇」という

ジャンルを確立し、その後の西欧のクラシック音楽界に大きな

影響を与えた人物として知られています。

 

反面、ワーグナーの中にあった反ユダヤ主義が、ナチスドイツに

利用され、ヒットラーも好んだために、第二次世界大戦のあと

イスラエルでは、長年ワーグナーの曲は演奏を許されませんでした。

 

熱烈なワーグナーの音楽愛好家はワグネリアンと言われ、その音楽

には人の心を捉えて離さないものがあるようで、私も危険な香りを

感じつつなぜかひきつけられています。

 

 

「ニーベルンゲンの指輪」

ワーグナーの楽劇はゲルマン神話や伝説を素材にした作品が多く、

代表作「ニーベルングの指輪」は4部作で上演に15時間かかる

長大な作品です。その中の3番目の「ジークフリート」の題材は

ドイツの英雄叙事詩「ニーベルンゲンの歌」がその素材になっています。

 

 

 

「ニーベルンゲンの指輪」

私の子ども時代、父の蔵書にあった「ニーベルンゲン伝説」を読み、

古代ドイツ(ゲルマン)の伝説になぜか惹かれていましたが、その伝説の

主人公ジークフリートがワーグナーの楽劇に登場していることを知り、

ワーグナーへの親近感を持ちました。その本は今の私が読んでも理解しずらい

注釈の多い内容ですが、その内容にひきこまれて拾い読みしながら理解した

ことを思いだします。 

 

 

ルートヴッヒ二世

 

「ローエングリン」

ワーグナーが神話伝説を題材にしながら作曲したオペラは、多くの人を

ひきつけ、まず最初に虜になったのは、(*)バイエルン国王ルートヴッヒ

二世(1864年―1886年)でした。国王は幼少の頃から憧れていた

ワーグナーを即位すると呼び寄せて後援し、オペラ「ローエングリン」の

世界に心酔し、ノイシュバインシュタイン城やバイロイト祝祭劇場などを

建てるなど、ワーグナーの音楽に没頭してしまいました。

 

 

ノイシュバインシュタイン城

国王のワーグナーに関わる浪費は国民の反感をよび、退位させられて幽閉され、

湖畔で水死体で発見されるという悲劇に、ノイシュバインシュタイン城は未完成に

終わりました。国王が心酔したオペラ「ローエングリン」はヒットラーも好み、

ワーグナーの音楽はナチスドイツの士気高揚に利用されていきました。

ルートヴッヒ二世の建てたバイロイト祝際劇場はワーグナーの作品上演の場として、

またバイロイト音楽祭として現在も人気を集めています。

 

 

「トリスタントイゾルデ」

ワーグナーはバッハやベートーベンとともにクラシック音楽における

(*)三大楽聖と言われていますが私生活では恋多き人で、妻ある身で

援助を受けていた滞在先の豪商の妻と恋に落ちいり、実らぬ恋から

「トリスタンとイゾルデ」のオペラが誕生しました。アリア

「イゾルデの愛の死」にはワーグナーの思いが秘められていると

言われています。

 

 

フランツ・リスト

そのころワーグナーは生涯の最良の伴侶、コジマと出会いました。

コジマは、ピアニストであり作曲家でもあったフランツ・リストとマリー・

ダグー伯爵夫人とのあいだに生まれ、父の音楽家としての才能と、文筆家としての

母の才能を受け継いだ芸術的天分と稀にみる鋭敏な知性にとんだ女性でした。

 

 

ワーグナーとコジマ

コジマはワーグナーとであったころ、ワーグナーのオペラ「トリスタンと

イゾルデ」の初演を手がけ、後にベルリン・フイルの初代常任指揮者となる

ハンス・フオン・ビューローの妻でしたが、ワーグナーとの運命的な出会いを

通して、子どもも夫も捨てる形でワーグナーのもとに走りました。

 

 

コジマ

ビューローとの離婚を経て正式にワーグナーの妻となったコジマは、一貫して

ワーグナーの最良の伴侶として夫の活動を献身的にささえ、1876年の

第一回バイロイト音楽祭以降、ワーグナーの死後も続くことになった

この音楽祭の中心を取り仕切り、作品の再演に尽力しました。

 

 

バイロイト祝祭劇場

バイロイト祝祭劇場は、ワーグナーが自身の作品の上演を目的として計画、

設計し、ルードウイッヒ二世の後援を得て完成した劇場です。1876年の

「ニーベルングの指環」の初演いらい、現在にいたるバイロイト音楽祭は

演奏者にも観客にも憧れの場となり、バイロイトはワグネリアンの聖地とも

言われています。

 

ナチスドイツの時代にヒットラーもバイロイト音楽祭を盛り上げ、ワーグナーの

音楽に協力しましたが、その道筋を作ったのはコジマ・ワーグナーでもありました。

彼女はその地位を息子に譲った後も、音楽界に長く影響を残し続けました。

 

 

オペラ「タンホイザー」

ワーグナーの音楽とバイロイト音楽祭に関わったナチスドイツとヒットラーの存在は、

演奏者にとってもファンにとっても決して忘れることの出来ないものです。その音楽の

演奏は現在もイスラエルではタブーとなっています。しかしワーグナーの音楽そのものは

反ユダヤ的なところがないために、その音楽の魅力は現在も多くの人々を惹き付けています。

 

 

*三大楽聖とは (諸説あるようですが)
バッハはバロックから古典派へ、ベートーベンは古典派からロマン派へ、

 そしてワーグナーはロマン派から現代音楽へという風に時代を画した大きな影響を

 与えた三人は、クラシック音楽における三大楽聖と言われています。

 

 

     映画「ルートヴッヒ」
*ルートヴッヒ二世はオーストリアの皇后エリザベートの従兄で、この二人を主人公に
した映画が数々作られています。ルキノ・ヴィスコンティが作った「ルートヴッヒ」には
この国王とワーグナーとの関係が描かれていて、見事な映画になっています。