06 Oct. 2012

夢はかなえられる  

        グスターボ・ドゥダメルとエルシステマ

先日NHKのクラシック番組でグスターボ・ドゥダメル指揮のベートーベンの第五番
「運命」が演奏され、オーケーストラはベルリンフィルハーモニー管弦楽団でした。

グスターボ.・ドゥダメルは私の大好きな指揮者で、テレビでその演奏を聴けたのは
初めてで、その時間は幸せなひとときでした。


20代にして世界各国の一流オーケストラから招聘され続け、現在31歳のドダメルは、
三つのオーケストラの音楽監督と首席指揮者を務め、タイム誌(アメリカ)の2009年度
”世界で最も影響力のある100人”に音楽界から選ばれました。



「100年に一人の逸材」と言われるグスターボ.・ドゥダメルは南米ヴェネズエラに生まれ、
ヴェネズエラ独特の音楽教育「エルシステマ」で成長しました。


ヴェネズエラは、人口2800万人の元スペインの植民地が独立した協和国ですが、石油以外に
めだった産業もなく、貧富の差が拡大する一方で、国民の大多数が貧しい暮らしを強いられて
います。犯罪も多く発生し、ストリートチルドレンも増加する一方でした。

1970年代半ば、この状況を憂慮した音楽家で教育家でもある、ホセ・アントニオ・アブレオ博士が、
企画、考案・提唱し、私財をなげうって実施したのが「エルシステマ」という教育制度です。
現在は国家事業になっています。


ベネズエラの首都カラカス

無料で子供たちに楽器を与えて、基礎知識や演奏を教えることにより、子どもたちを犯罪から守ろうという
教育制度が現在ヴェネズエラに根付いています。単に音楽というのではなく、オーケストラにしたことで、
音楽と社会性の両方を同時に教えられ、それは着実に成果を上げてきました。


「エルシステマ」に参加する子どもたち

「エルシステマ」設立から30年たって、この制度の結晶とも言うべきシモン・ボリバル・ユースオーケストラ・
オブ・ヴェネズエラが誕生しました。ヴェネズエラには「エルシステマ」によってすでに200以上の青少年
オーケストラが設立され、このシモン・ボリバル・ユースオーケストラ・オブ・ヴェネズエラは、その頂点に
位置する青少年の憧れであり目標になっています。



シモン・ボリバルとは、19世紀はじめにスペインの圧制から南米諸国を開放したヴェネズエラ出身の
革命家・思想家の名前で、ボリビアの建国者でもあり、南米各地にその名を残しています。


ドゥダメルとシモン・ボリバル・ユースオーケストラ

グスターボ・ドゥダメルは「エルシステマ」とともに成長し、17歳でオーケストラの指揮もするようになりました。


オーケストラを指導するドゥダメル

世界的な指揮者のクラウディオ・アバドにベルリンフイルハーモニーのサイモン・ラトル、ダニエル・バレンボイムや
マルタ・アルゲリッチなど世界最高峰のアーティストたちがこのオーケストラを絶賛し、彼らの指導を買って出て
育成に力を注ぎました。


私の好きな指揮者クラウディオ・アバドと談笑

「エルシステマ」の制度のもと、子どもたちにオーケストラを、目標に向かって4,5年かけてじっくりと
取り組ませ、それが確実にステップアップしていきました。中学生の段階から将来を見据えて育てた
オーケストラが、現在世界で有名なオーケストラの一つになっています。


オーケストラのメンバー(20歳から25歳)

ドゥダメルが指揮するオーケストラは、ザルツブルグ、ロンドン、ニュウヨークをはじめ、欧米各地で
爆発的人気をよび、チケットは半年前に売り切れている状況が起きています。


日本初来日のおりには、150人を超える大編成と個々のテクニックの高さで一糸乱れぬ演奏を聴かせ、
聴衆を圧倒しました。その熱狂ぶりは、さまざまなサイトに書かれています。


1981年ベネズエラに生まれたグスターボ・ドゥダメルは、2004年の第一回グスタフ・マーラー指揮者コンクールに
優勝し、25歳で一躍世界の桧舞台にたちました。それ以来ベルリン・フイル、ウインフイル、ミラノスカラ座など
世界各国の一流のオーケストラから数限りなく招聘され続けています。、


ドゥダメルは、31歳にしてシモン・ボリバルユース・オーケストラやロスアンゼルスフイルハーモニー、の音楽監督や
スエーデンのイエーテボリ交響楽団の首席指揮者に就任しています。


ドゥダメルの指揮のもとで演奏したロスアンゼルス・フイルやベルリンフイルの団員たちは、
彼のレパートリーの広さや大曲に強いこと、リハーサルの進め方が上手く、演奏者を
気分よく演奏へと導いていると高く評価しています。演奏が終わったあと誰よりも高く
評価したのはオーケストラの団員たちでした。


常任職を持つロスフイル、イエテボリ交響楽団以外、ベルリンフイルとの関係が
深まり、これまで首席指揮者しか指揮してこなかった大晦日のジルベスター・
コンサートの指揮までまかせた上に、ザルツブルグ・イースター音楽祭にも登場する
ことになりました。


ドゥダメルの圧倒的な長所として、短時間に楽曲の特徴を掴む才能があると言われています。
本番で曲を完成させるためには、自分が理解している曲の特徴を、オーケストラにどう伝え、どう演奏
させるかの技術に優れていることと言われています。


ドゥダメルは「ベートーヴェン以上に、音楽が人生を変え得るという絶対的な信念を典型的に示している
作曲家はいない」と言っています。いまやドゥダメルに対してウイーンフイルをはじめ、世界の超一流のオーケストラから
指揮の申し込みが続き、その調整が困難になりつつあると言う状況のようです。


2010年のジルベスターコンサートで私の好きなメゾソプラノ歌手エリナ・ガランチャと共演

私は、手持ちのDVDでベートーベンの交響曲「英雄」と「三重奏曲」ムソルグスキーの組曲
「展覧会の絵」を聴いたぐらいですが、アフロヘアーの髪を振り乱して、熱情的に指揮する姿に
若々しい魅力を感じ、何よりも演奏後にオーケストラの団員に丁寧で対等に、仲間のような
挨拶をするのがとても印象的でした。

またこの映像や、YouTube での映像でも、彼が指揮台の上で挨拶をしないことを不思議に思っていましたら、
それは、あくまで「私は演奏者と同じ立場です。」ということを主張しているようで好感がもて、その人間性に
惹かれフアンになりました。


アンコールには全員ベネズエラの国旗の色をあしらった服に着替えて演奏しますが、ドゥダメルが指揮する
音楽はクラシックなのにロックコンサートに来ているような躍動感を感じさせます。

「エルシステマ」の提唱者ホセ・アントニオ・アブレオ博士は「教育とは子どもたちに
希望を与えることである。そして音楽はそのベストな方法の一つである」と述べて
います。この制度の30年の成果がシモン・ボリバルユース・オーケストラであり、
そのシンボルがグスターボ・ドゥダメルと言えます。

演奏曲目終了後のアンコール曲を是非お楽しみください。

動画です
バーンスタインの「ウエスト・サイド・ストーリー」より「マンボ」
ヒナスステラの「エスターシア」より「マランボ」
参考資料  奇跡の指揮者    山田真一    ヤマハミュージックメディア